マルフーガ農園のオリーブ収穫作業は朝の九時から始まります。この時間になると、前日にあらかじめ打ち合わせしておいた場所に皆が集い、後に各自手摘み作業に取り掛かります。
一人それぞれ一本のオリーブの樹を担当し、低いところはそのまま地面から、
高くて手が届かない所には木製のはしごを使い、オリーブの実を一粒づつ丁寧に摘んでゆくのです。
オリーブオイルの生産者の大部分が、こういった地味な作業を簡素化・効率化するために、プロペラのような形をした、へらの両端を小刻みに振るわす機械によって枝を強く揺さぶり、
前もってオリーブの木の下に敷いておいた収穫網の上にオリーブの実を地面に落とし収穫する方法を用いているのに対し、ここマルフーガ農園では頑なに昔からの手法を貫き、伝統を守っています。
機械による収穫で強い衝撃を受けて傷ついたオリーブの実は、発酵・腐敗・酸化が早く、これらがオリーブオイルの味の変化にも深く影響し、
最高のクオリティのエキストラヴァージンオリーブオイルを作るのには全く適していないのです。生産効率を求めるために商業化主義に走る企業がここイタリアでも多い中で、
マルフーガ農園のオリーブ林にての手摘み作業の風景は、未だに昔の時間がゆっくりと流れているかのような印象を受けます。
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手摘みの様子。シャッターを切る度にカメラ視線を向けてくれるおじさん。 |
こうして手摘みされたオリーブの実は、各自用意した肩掛けサックの中に入れていきます。黙々と作業に励んでいる人もいれば、おしゃべり好きのイタリア人らしく会話に弾みながら作業をこなして
いく人、みんな自分のペースで仕事に取り組んでいます。肩掛けサックの中のオリーブの実がある程度いっぱいになると、
収穫したオリーブの実を、地面に置かれた大きい麻袋の中に一端移し、
またオリーブ摘みに戻ります。こうした単純な作業の繰り返しが昼まで続いた後、持参した弁当で草むらの上で昼食を取り、午後の三時半、四時あたりまでまた手摘み作業に戻ります。
手摘み作業が終わると、締めくくりに、皆で「どの辺りのオリーブの樹がたくさん実っているのか」を探索しに回り、そうして見つけた程よく実っているオリーブの樹々の元に明日の朝集う
打ち合わせをします。収穫したオリーブの実が入った袋を工場に運び終えると、手摘み作業者達のマルフーガ農園での一日が終わります。
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肩掛けサックの中には採れたてのオリーブの実が。 |